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アゲマン!
第10章 幸せの謎
朝からソワソワとして沙那は落ち着かない様子を見せる。
「せめてパンくらい食べて、コーヒーくらいを飲みなさい。」
部屋を熊のようにウロウロとする沙那にリンがダイニングテーブルの上を軽く叩き、母親のように着席を促す。
「う…うん…。」
落ち着かない理由はリンから朝一番の飛行機で龍平が日本に着いたと聞かされたからだ。
今は空港へとロブが迎えに行っている。
リンは龍平がここに来たらロブとまた空港へと向かい帰ると言う。
落ち着かない沙那がコーヒーでパンを胃袋へと流し込んだ時だった。
キンコーン…
インターホンが鳴る。
自動でカメラ映像が写り、大男の首から下だけが写っている。
リンが玄関を開けた。
「Hi…,Rob….」
リンが大きな黒人の男の腕にすっぽりと収まると2人は周りを全く気にしていないように熱いキスを交わし出す。
「イチャつくんなら、さっさと帰れ…。」
不機嫌な声が大男の後ろから聞こえる。
沙那の目頭が熱くなる。
多分、飛行機でタバコが吸えないまま、車でも吸わずにここまで来たのだと沙那にはわかる。
「じゃあね…、ボス。ここの合鍵。」
リンが沙那から預かっていた沙那の家の鍵を龍平に渡し、ロブが玄関に置いていたリンの荷物とリンの腰を抱えると、その夫婦は龍平と入れ替わるように出て行った。
龍平には聞きたい事が山ほどある。
その気持ちを誤魔化すように沙那は龍平に背を向けてリビングへと向かう。
今、口を開けば泣いてしまう自分がわかる。
気丈なまま、可愛げのない女を演じるのに沙那は必死だ。
「ほら、灰皿…。コーヒーくらい入れてあげるから子供みたいにイライラとするの止めてよね。」
リビングのソファーの前にあるガラステーブルに灰皿を置いて台所へと向かう。
灰皿はわざわざ龍平の為にと買って用意をしていたものだ。