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アゲマン!
第10章 幸せの謎
龍平には背を向けたままだ。
なのに沙那には龍平の動きが手に取るようにわかる。
ミリタリージャケットを脱ぎ、ソファーにバサッと無造作に置く音…。
ドサッとソファーに座り、カサコソと紙パッケージのタバコを開ける。
ピンーッ…
オイルライターの蓋を開ける金属音。
シュボッ…
ホイールがフリント(発火石)を削り火花の散らしオイルの染みた芯に炎を灯す。
僅かな静寂…。
フーッ…
龍平の吐く息…。
もう龍平の機嫌は治っているはずだと沙那はコーヒーを入れながらクスクスと笑ってしまった。
「何だよ?」
ずっと背を向けたままの沙那に拗ねたように龍平が言う。
コーヒーを容れたマグカップを龍平とは目を合わさないようにして沙那はリビングに運ぶ。
ガラステーブルにコーヒーを置いた瞬間だった。
沙那の腕が龍平に掴まれてコーヒーを零しそうになる。
「ちょっと!?」
叫ぶ沙那を龍平が引き寄せて強引に沙那の口を龍平の唇で塞いでいた。
強引だが、沙那を怯えさせるキスではなく沙那がそこに存在している事をしっかりと確認するようなキスが続く。
唇を貪るように喰み、撫でるように龍平の舌が這う。
その舌に舌を触れさせると俺のだと言わんばかりに舌を絡めて吸い上げる。
沙那は息が出来ずに全身の力が抜ける。
「っんぁ…。」
キスが離れ、沙那が息を吸う。
「不用意な接近…。」
龍平を試すように沙那が呟く。
「うるせぇよ…、今は休暇中だ。」
龍平が沙那を抱きしめて答える。
休暇中でも沙那を欲しがるつもりかの確認をしたかっただけだ。
龍平にとって沙那があくまでも仕事のターゲットだけなのかが不安だった沙那…。