この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夢…獏の喰わぬ夢
第8章 変化
「半人前のくせに、爺さんに留守任せて旅行なんて出来ないと、かみさんには何もしてやれなかった。
そのうち爺さんが倒れて、かみさんは店番の他に介護までしなければならない、
俺と一緒になって苦労ばかりかけた。
爺さんは体は不自由になっても口ばかり達者でな。
いいときは、配達人の若い衆を抱えて忙しいばかりの時もあったが、
お得意さんってのがお互いに必要ない時代になっちまったんだな。
店をたたもうって爺さんに話したが、
『俺の目の黒いうちは看板下ろすのは許さねえ。』って意地張りやがって、食うに困るような生活も経験した。
そのうち、爺さんが自分が死んだ時に、開ける酒だって、
毎年正月に新酒を用意するようになった。
何年かは、これで一年生き延びれたって大晦日に開けて、
正月の三が日には飲んでしまう。
ってのが続いたな。俺達にはちっとも呑ませちゃくれない。
憎たらしい爺さんだと思ったよ。