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夢…獏の喰わぬ夢
第8章 変化
それで爺さんの言う通りにこの店をやっているわけさ。
おかげで食うには困らないがね。
子供のいない俺は親父を越えられないのかもしれないな。」
僕は、黙ったままだった。
「悪いね。つまらん長話になってしまった。
ただ、自分で稼ぐって気持ちは大事だと言うだけのつもりだったが。
残り物で悪いが、他に食べたい物、飲み物でもいいし、取ってくれ。
カミサンにも持っていくか。しばらく店番頼んだよ。」
と言って、店主は奥に行った。
僕は、飲み物をもらってサンドイッチを食べた。
店主の話が気になった。
自分は兄貴や親に反感を持っているだけで、自分の意志などあるだろうか。
いつまでも学生でいられる訳ではない。
彼女とずっと一緒にいたい。学生の間は、それだけでいい。
しかし、一流でなくとも、何らかの仕事に就かなけばならない。
当たり前から逃げて、何も考えていなかったが、彼女と一緒にいるには、金を稼がなければ。
いまさら、当たり前のことに気がついた。
そして、子供、親父を越える、なんてあまりに先のことで検討もつかないが、いつか考えなければいけないことだな。と思った。