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夢…獏の喰わぬ夢
第8章 変化
そして、俺が死ぬまで正月には蔵元から酒が届くようにしてあるとさ。
憎たらしいと親に礼も言わずじまいだった俺は、爺さんに何もしてなかったことが悔しくて泣いた。
かみさんは、今年は正月からおかしなことばかりで、きっと自分の死期を悟ってたんだ、立派な人だったと泣いた。
四十九日の法要が終わると、店をコンビニエンスストアにしないか、と営業マンがきた。
俺は、店をたたむっていってもその後どうするか何も考えてなかったんだ。
しかも、爺さんの法要が済むのを待っていたかのように現れた営業マンに腹が立って、帰れと怒鳴った。
すると営業マンが『先代からの依頼できた。』と言うのだ。
店の設計、自宅部分の間取り、契約方法、何から何まで、爺さんが相談に来て、
もし俺が良ければすぐに契約出来るようになっていた。
そして営業マンから爺さんの手紙を手渡された。
『商売人は商売しか出来ない。
酒屋は、店潰すまで酒飲んで、食うに困るが、
これなら店のもの食って生き延びるだろう。
店に気に入った酒を置いていいそうだ。
最期のわがままだが、つまらん提案だと思うなら無視してくれ。』
と書いてあった。