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夢…獏の喰わぬ夢
第1章 春
彼女は、特に目立った容姿でもなく、僕に興味を持って近づいてきた訳でもなかった。
後から思えば、僕は、たまたま都合の良い存在だっただけなのかもしれない。
大学に入りたての頃は、受験という一つの問題を乗り越えた達成感と、新しい環境に、訳もなく心躍らせていたが、
4月の終わりには、夢に夢抱いていただけの自分に気がつき始めていた。
どこかに自分の置き場を無理やり作るのが厭で、サークルにも属さず、恋愛に発展するであろう仲間(グループとやら)も居ないまま、
ただ独り、日課をこなすだけの日々に落ち着こうとしていた。
周りは、ゴールデンウイークを如何に過ごすかで、盛り上がっていたが、強がりでなく、僕にとっては、どうでもいいことだった。
そんな僕が、勉学に熱心なはずもなく、講義での席取りでも、僕の周りには、似たような者たちが、何となく無難な位置に決まって座っていた。
彼女に声を掛けられたのは、そんな時で、彼女は、隕石か災難か天使かのように、突然僕の生活に割り込んで入ってきたと感じた。