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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第13章 柊屋敷の嫁御様
「奥様、髪はこんな感じでよろしいでしょうか?」
御披露目の会の当日になりました。
今日のスグリ姫のお支度係は、三人の新しい侍女のうちの一人のデイジーです。
予めバンシルも交えて一度試してみていましたし、バンシルはバンシルで今日の支度がありましたので、今日は姫とデイジーだけで支度をしています。
「ええ、デイジー。とっても素敵だと思うわ、ありがとう!あとは、髪飾りなんだけど…」
「旦那様がお持ちになるのでしたね」
「そうなの。そろそろ来ると思うんだけど…」
スグリ姫は、いつも声を掛けたり叩かれたりするより先に我が物顔で開かれる扉を、心配そうにちらりと見やりました。
「まさか…っ」
そんな姫を見ていたデイジーは、ブラシを握り締めながら、はっと顔色を変えました。
「へ?まさか?」
「まさか…まさか旦那様は、このお屋敷の廊下の魔物に…っ」
「ろっ!?廊下の魔物!?」
「ええ…こちらのお屋敷の廊下は、四角く曲がっていますでしょう?」
「ええ、そうね」
この家はコの字の形に部屋が配置されているので、廊下が不思議な曲がり方をしている箇所が御座います。
「…これは、うちの祖母に聞いた話なんですけど…」
「…ええ…」
声を潜めて語り始めたデイジーに合わせるように、姫もひそひそ声で相槌を打ちました。
「…四角く曲がった廊下の角には、人攫いの魔物が住む事が有るそうなんで御座いますよ…」
「ひっ!…ひとさらいっ…!?まさか、サクナ、魔物に攫われちゃったのっ…?!」
姫の顔色は青くなり、デイジーは俯きました。
「…旦那様…お労しい…こんな、こんなお目出度い日に…!」
「…んな訳無ぇだろうがぁああああ!!!!」
「あら。おはようございます、旦那様」
「サクナぁあああああああ!!無事だったのぉおおおおおお!!」
「デイジーよ。お前はその嘘…じゃねえ、創作って奴を、大概にしろ!」
決して攫われてなど居なかったサクナは、纏わりついてくる姫をよしよしと適当に宥めてあしらいながら、侍女を叱りつけました。
「毎度申し訳御座いません。奥様がいつも見事に乗って下さるもので、ついつい溢れる創作意欲が」
「お前の溢れる創作意欲は、スグリの支度を手伝う時だけにしとけ…よ…っ…」
「…サクナ?どしたの?」
デイジーを叱っていた声が段々小さくなって語尾が消えていったのに気が付いて、姫はサクナを見上げました。
御披露目の会の当日になりました。
今日のスグリ姫のお支度係は、三人の新しい侍女のうちの一人のデイジーです。
予めバンシルも交えて一度試してみていましたし、バンシルはバンシルで今日の支度がありましたので、今日は姫とデイジーだけで支度をしています。
「ええ、デイジー。とっても素敵だと思うわ、ありがとう!あとは、髪飾りなんだけど…」
「旦那様がお持ちになるのでしたね」
「そうなの。そろそろ来ると思うんだけど…」
スグリ姫は、いつも声を掛けたり叩かれたりするより先に我が物顔で開かれる扉を、心配そうにちらりと見やりました。
「まさか…っ」
そんな姫を見ていたデイジーは、ブラシを握り締めながら、はっと顔色を変えました。
「へ?まさか?」
「まさか…まさか旦那様は、このお屋敷の廊下の魔物に…っ」
「ろっ!?廊下の魔物!?」
「ええ…こちらのお屋敷の廊下は、四角く曲がっていますでしょう?」
「ええ、そうね」
この家はコの字の形に部屋が配置されているので、廊下が不思議な曲がり方をしている箇所が御座います。
「…これは、うちの祖母に聞いた話なんですけど…」
「…ええ…」
声を潜めて語り始めたデイジーに合わせるように、姫もひそひそ声で相槌を打ちました。
「…四角く曲がった廊下の角には、人攫いの魔物が住む事が有るそうなんで御座いますよ…」
「ひっ!…ひとさらいっ…!?まさか、サクナ、魔物に攫われちゃったのっ…?!」
姫の顔色は青くなり、デイジーは俯きました。
「…旦那様…お労しい…こんな、こんなお目出度い日に…!」
「…んな訳無ぇだろうがぁああああ!!!!」
「あら。おはようございます、旦那様」
「サクナぁあああああああ!!無事だったのぉおおおおおお!!」
「デイジーよ。お前はその嘘…じゃねえ、創作って奴を、大概にしろ!」
決して攫われてなど居なかったサクナは、纏わりついてくる姫をよしよしと適当に宥めてあしらいながら、侍女を叱りつけました。
「毎度申し訳御座いません。奥様がいつも見事に乗って下さるもので、ついつい溢れる創作意欲が」
「お前の溢れる創作意欲は、スグリの支度を手伝う時だけにしとけ…よ…っ…」
「…サクナ?どしたの?」
デイジーを叱っていた声が段々小さくなって語尾が消えていったのに気が付いて、姫はサクナを見上げました。