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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第13章 柊屋敷の嫁御様
マーガレットは、新しく雇われた侍女のうちの一人です。三人の侍女が居る時は、大抵ヴァィオレットと言うもう一人の侍女と一緒に居りました。サクナに言わせると、まるで「動き担当マーガレット、声担当ヴァィオレット」のように、ほとんど喋らないマーガレットの言いたい事をヴァィオレットが代わりに説明してくれる、という様な状態でした。
マーガレットには、手先が器用で縫い物も料理も工作も上手い、という特技が有りました。一時はお針子か料理人になろうとしたらしいのですが、人見知りが激し過ぎて喋るのが苦手過ぎ、沢山の人間と一緒に働くのは難しいと言うことで、断念し続けた過去がありました。幼馴染みのヴァィオレットと一緒に面接を受けに来て、一次面接で突然やったこともない筈の果物細工を見様見真似で作ったことでサクナに「面白ぇ」と気に入られ、二次面接で姫と木工の話で意気投合し、ヴァィオレットと二人でめでたく採用されたのです。
スグリ姫はマーガレットの事を、一人でいると居るのか居ないのか分からないほど静かで大人しい侍女だと思っておりました。バンシルに言わせると、静かだけれど決して大人しくはない、と言う事でしたが。
「マーガレット、ごめんなさい。とても静かにしててくれたから、ついうっかりして…サクナ?」
「何だ?」
「お願い。下ろして。」
控え室に入ってから今までずっと、サクナの膝の上に乗せられてあれこれと撫でられ触れられ口づけされて愛でられていたスグリ姫は、新旧の侍女にその様をしっかり見られた事に気付いて、真っ赤になりながら頼みました。
ところが。
「あ?何でだ?」
姫のお願いは、全く通じませんでした。
「何で、って」
「もうすぐ行かなきゃならねぇんだ、今更下りなくても良いだろ」
そう言って姫の耳元に口づけたサクナに、侍女歴=年齢と言っても過言では無いバンシルが、呆れた様に声を掛けました。
「ご当主様?」
「何だよ」
「私、奥様のドレスの様子を拝見したいのですが」
「あー、分かった。…ほら、存分に見ろ」
椅子の上で姫ごとバンシルの方に向きを変え、自分の膝の上で丸まっていた姫の背を腕にもたれさせるように伸ばさせてドレスがそれまでより見やすいようにしたサクナを、バンシルは白い目で見ました。
マーガレットには、手先が器用で縫い物も料理も工作も上手い、という特技が有りました。一時はお針子か料理人になろうとしたらしいのですが、人見知りが激し過ぎて喋るのが苦手過ぎ、沢山の人間と一緒に働くのは難しいと言うことで、断念し続けた過去がありました。幼馴染みのヴァィオレットと一緒に面接を受けに来て、一次面接で突然やったこともない筈の果物細工を見様見真似で作ったことでサクナに「面白ぇ」と気に入られ、二次面接で姫と木工の話で意気投合し、ヴァィオレットと二人でめでたく採用されたのです。
スグリ姫はマーガレットの事を、一人でいると居るのか居ないのか分からないほど静かで大人しい侍女だと思っておりました。バンシルに言わせると、静かだけれど決して大人しくはない、と言う事でしたが。
「マーガレット、ごめんなさい。とても静かにしててくれたから、ついうっかりして…サクナ?」
「何だ?」
「お願い。下ろして。」
控え室に入ってから今までずっと、サクナの膝の上に乗せられてあれこれと撫でられ触れられ口づけされて愛でられていたスグリ姫は、新旧の侍女にその様をしっかり見られた事に気付いて、真っ赤になりながら頼みました。
ところが。
「あ?何でだ?」
姫のお願いは、全く通じませんでした。
「何で、って」
「もうすぐ行かなきゃならねぇんだ、今更下りなくても良いだろ」
そう言って姫の耳元に口づけたサクナに、侍女歴=年齢と言っても過言では無いバンシルが、呆れた様に声を掛けました。
「ご当主様?」
「何だよ」
「私、奥様のドレスの様子を拝見したいのですが」
「あー、分かった。…ほら、存分に見ろ」
椅子の上で姫ごとバンシルの方に向きを変え、自分の膝の上で丸まっていた姫の背を腕にもたれさせるように伸ばさせてドレスがそれまでより見やすいようにしたサクナを、バンシルは白い目で見ました。