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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第13章 柊屋敷の嫁御様
「大丈夫!知ってるから!『俺は今でもお前んだろ』とか何とか言われるって、知ってるから!」
サクナを遮ったまま、姫は小声で言い募りました。
「だって、知ってるけど、知ってても何回言われても、そう思っちゃうんだもの!それに、来年の春だって、どんなにお願いしたってすぐ来たりしないって、分かってるし!分かってるけど、でも、言ってみろって、言われたからっ!」
息切れしたのか、姫はそこで一度言葉を切って辺りを見回し、近くに置いてあった先程自分が飲もうとしていた水のグラスを手に取って、ぐいっと呷りました。
「欲張りついでに言っちゃうけどっ、私っ、赤ちゃんも欲しい!!女の子も欲しいし、男の子も欲しいわ!」
姫はそう言い切ると、空になったグラスをテーブルにとん!と置きました。
「…はー、言っちゃったー…すっきりしたー…」
「…スグリ…」
願い事をさらけ出し、一人やり切った感に浸っている姫を見て、サクナは呆然と姫の名前を呟きました。それからはっとした様に頭を振って、物言いたげに口を開きかけ…たのですが。
「スグリ様」
サクナの言葉がまだ声にならないうちに、横から姫に声が掛かりました。
「はいぃっ!?」
「ちょっと、宜しいですか?」
「はい!…え、若奥様!?」
そこに慎ましやかに立っていたのは、ローゼルの兄の奥方である、領主の家の若奥様でした。
「失礼致します、サクナ様。あのう…お集まりの奥様方が、スグリ様とお話ししたいとおっしゃっていて…もしよろしかったらいらして頂けないかと」
「あら…」
「本来でしたら私よりお親しい義母かローゼルがお声をお掛けした方が宜しいのでしょうけど、今日義母は参っておりませんし、ローゼルは…今、姿が見当たらなくて」
「ローゼル様が?」
若奥様の言葉を聞いて、姫も辺りを見回してみましたが、確かに姿が見えません。ローゼルは背が高く、遠くからも目立つ美人です。見当たらないということは、室内には居ないのでしょう。
「ビスカスも居ねぇな…や、あいつは小せぇから、人に紛れてんのかも知れねぇが」
サクナが、姫にしか聞こえない位の小声で、そう呟きました。
「若奥様」
「はい、サクナ様」
「ちょうどスグリを奥様方の所にご挨拶に伺わせようとしていた所です。紹介をお願いしても構いませんか?」
サクナが余所行きの言葉と笑顔で頼むと、若奥様はほっとした様に顔を緩ませました。
サクナを遮ったまま、姫は小声で言い募りました。
「だって、知ってるけど、知ってても何回言われても、そう思っちゃうんだもの!それに、来年の春だって、どんなにお願いしたってすぐ来たりしないって、分かってるし!分かってるけど、でも、言ってみろって、言われたからっ!」
息切れしたのか、姫はそこで一度言葉を切って辺りを見回し、近くに置いてあった先程自分が飲もうとしていた水のグラスを手に取って、ぐいっと呷りました。
「欲張りついでに言っちゃうけどっ、私っ、赤ちゃんも欲しい!!女の子も欲しいし、男の子も欲しいわ!」
姫はそう言い切ると、空になったグラスをテーブルにとん!と置きました。
「…はー、言っちゃったー…すっきりしたー…」
「…スグリ…」
願い事をさらけ出し、一人やり切った感に浸っている姫を見て、サクナは呆然と姫の名前を呟きました。それからはっとした様に頭を振って、物言いたげに口を開きかけ…たのですが。
「スグリ様」
サクナの言葉がまだ声にならないうちに、横から姫に声が掛かりました。
「はいぃっ!?」
「ちょっと、宜しいですか?」
「はい!…え、若奥様!?」
そこに慎ましやかに立っていたのは、ローゼルの兄の奥方である、領主の家の若奥様でした。
「失礼致します、サクナ様。あのう…お集まりの奥様方が、スグリ様とお話ししたいとおっしゃっていて…もしよろしかったらいらして頂けないかと」
「あら…」
「本来でしたら私よりお親しい義母かローゼルがお声をお掛けした方が宜しいのでしょうけど、今日義母は参っておりませんし、ローゼルは…今、姿が見当たらなくて」
「ローゼル様が?」
若奥様の言葉を聞いて、姫も辺りを見回してみましたが、確かに姿が見えません。ローゼルは背が高く、遠くからも目立つ美人です。見当たらないということは、室内には居ないのでしょう。
「ビスカスも居ねぇな…や、あいつは小せぇから、人に紛れてんのかも知れねぇが」
サクナが、姫にしか聞こえない位の小声で、そう呟きました。
「若奥様」
「はい、サクナ様」
「ちょうどスグリを奥様方の所にご挨拶に伺わせようとしていた所です。紹介をお願いしても構いませんか?」
サクナが余所行きの言葉と笑顔で頼むと、若奥様はほっとした様に顔を緩ませました。