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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第13章 柊屋敷の嫁御様
「えーっと…ええ、まあ…」
毎日とろんとろんに愛され過ぎて、時々寝込まねばならなくなる事なども「ご不満」として浮かびましたが、それも人には言い難いことではありました。

「…もしかして…夜の生活の、ご不満ですの?」
「夜の、生活…?」
耳慣れない単語をひそひそと囁かれた姫は、意味が分からず、首を傾げました。それを見た奥様は、またひそひそと説明を追加しました。

「閨でのご不満、と言うことですわ」
「閨…ああ、それで、夜…!」
姫は、なるほどー!と口に出さずに納得し、感心しました。

こちらに来てからはサクナが日中仕事をしている事が多いので、確かに夜致す事が多くはなりました。しかし、都に居たときはサクナが仕事をして居なかったので、隙有らばとか事ある毎にと言う感じで、夜だけでなく朝でも昼でもいつでも時間はお構いなしで有りました。それにこちらに来てからも、朝目が覚めて微睡んでいるうちになんとなくそういう雰囲気に雪崩れ込んだり、なんとなくではなく意図的に丸め込まれて陥れられたり、「自分で自分を慰めろ」と言われた時はサクナの仕事がたまたま終わった午後突然に言われたりで、夜以外にも、何かと仲良くしております。
なので、「夜の生活」という単語が閨での秘め事を指すのだと言う事は、姫に取っては少々新鮮でした。

「ええと…『夜の生活』…そうですわね、『夜の生活』はー…」
スグリ姫はいつもの癖で、新しく憶えた「夜の生活」という単語を頭の中で繰り返しながら、この場で言って差し支えの無い、当たり障りの無い話はどれだろうと、酒が回り始めた頭で考えました。しかし、思い出すのは口にするには恥ずかしすぎる、濃密に愛を交わした記憶ばかりでした。
…当然です。
そもそも、「夜の生活」云々等と言うことは、サクナが時々言う様に「二人が知っていて納得していれば、それで良い事」です。他人に様子を聞かれる等と言う事は、全くもって余計なお世話です。
もしここにローゼルやバンシルが居れば、さり気なく止めるかあからさまに止めるか、話題を上手く逸らせてくれたでしょう。けれど、素直で単純でちょっとお馬鹿で少しだけ酔っ払い始めた姫は、お客様のご希望には応えなくっちゃという、要らぬ責任感に燃えておりました。
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