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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第13章 柊屋敷の嫁御様


「おめでとう!」
「おめでとうございます!」

新しい家族となる為の儀式を終えた二人に、あちらこちらから、祝福の言葉が掛けられました。

正式な婚姻の誓いを終えたばかりの花嫁は、感激の涙で潤んだ目で、祝ってくれている人々を見回しました。
居並ぶ人々の中には、王と后、弟夫妻に大臣、バンシル、タンム卿、ローゼルとビスカス、領主夫妻、披露目の会でも祝ってくれた殿方達やご婦人方、義父と義母、アダンにベラに三人の侍女達に使用人達、そして勿論、影の様に控えているクロウの姿も有りました。

花嫁が自分の傍らを見上げると、夫は静かに微笑んで、頷き返してくれました。そして今にも零れそうになっている涙を、微かに柑橘の香りのする指で、器用に拭ってくれました。

その後、感極まっている二人の上に、人々の手から祝福の花片が降り注ぎました。
結婚の儀式を終えた新郎新婦に花を降らせて祝福するのは、この地の風習です。
果物を主な生業とするこの地では、結婚式から初夜の初床に至るまで、実りと多産と豊穣をもたらす象徴として、果物を産み出す「花」を惜しみなく使うのが、新婚夫婦への何よりの祝いの形でありました。
白、黄色、薄桃色に濃桃色と、様々な色の花片が、二人が見えなくなりそうな程に浴びせ掛けられました。
祝福を受けていたこの家の当主たる花婿は、何か思い出した様にはっとして自分の隣を見ましたが、花片が激しく舞っていて、妻の姿は見えません。

「スグリっ!?」
花婿が、妻の名を呼んだ時。


「……サクナ!!」
花片の向こうから、喜びにはしゃいだ声が聞こえて来て、やがてこの地の白いドレスを纏った、輝くばかりに美しく幸せな花嫁が、花片の向こうから姿を現しました。

「ねえ、見て!こんなに、お花が…!」
髪や肩やドレスの上に舞い落ちた花片は、まるで花飾りの様に、初々しい花嫁を彩っています。
「すごーく、綺麗ね…!!」
「…ああ…綺麗だな…」
「素敵ねえ…!私、こんなの、初めて見たわ!!」
「本当に、この世の者とは思えねぇほど、綺麗だ…」
溢れる様な桃色、黄色、白と、色とりどりの祝福の花片が降りしきる中。

花婿は、蕩ける様に笑いかけてくる花嫁に手を伸ばして、捕まえて、抱き寄せて、口づけて、
もう二度と離れない様にしっかりと、両手できつく抱き締めました。
 
 
 
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