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イかせ屋…2
第11章 その男…



「どんどん食べなよ。」


屋台に居る怖い顔のお兄さん達が庭に並べたテーブルの上にたこ焼きやりんご飴を置いてくれる。

ケーキもそのテーブルに置く。


「ローソクは立てないのか?」


親分様が昌さんと同じ事を言う。

清太郎さんからは昌さんのお母様に一目惚れをした親分様が必死のプロポーズをして口説いたんだという昔話を教えて貰った。

今は親分様にそっくりな昌さんが私に必死。

昌さんが2と7の数字の型どったローソクをケーキに立てる。


「年齢はともかく願い事をしないとな。」


昌さんが子供みたいな顔で笑うから年齢を隠すのは諦める。

火が灯るローソクに向かって願い事をする。

息を吸って一気にローソクの火を吹き消した。


「おめでとう!」


皆んなで祝ってくれる誕生日。

間違いなく、この家に幸せな花嫁として嫁いで来る事になると確信する。

親分様と昌さんがご機嫌でケーキを食べてる。


「美味しい?」

「うん…、梓のケーキが一番美味い。」


よしよし、可愛いぞ。

厳つい顔のイかせ屋が愛おしいと思う。


「願い事は何をした?」


昌さんが聞いて来る。

これを答えると大変な事になりそうな気がする。


「内緒…。」

「梓…!?」


昌さんが不安そうな顔をする。

メンタルの弱いイかせ屋…。

私には必死のイかせ屋…。

ため息が出る。


「梓…?」


捨てられた仔犬みたいに情けない顔の昌さんが情けない声で聞いて来る。


「言わない。」

「梓…。」


この可愛い顔に弱いと最近は思っちゃう。

アタフタとする昌さんに親分様と昊さんが本当に情けないという顔をする。

屋台のお兄さんやヒロ君、昇君はニヤニヤとして私を見る。



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