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イかせ屋…2
第1章 その男、過保護につき…
それは平和な秋の事だった…。
ごく普通に私が暮らすマンションの1室でごく普通に私が作ったお昼ご飯を食べてた時の事…。
「仕事を探さなきゃ…。」
現在無職である自分の為にと呟いた一言。
その言葉に、今の今までニコニコと笑顔で私のご飯を食べてた彼の目付きが変わる。
ちょっと厳つい顔の人だから、そういう瞬間はビクンッと身体が反応をしちゃう。
「仕事なんかしなくていい…。」
やたらと響く素敵な声で重くそう言われる。
「なんで?仕事をしないと何かと困るでしょ?」
「梓(あずさ)はそんな事はしなくていい…。」
「だから、なんでよ?」
「梓は俺と結婚をする。だから仕事なんかする必要はないし、梓は梓の好きな事だけをすればいい。」
………。
多分、これってプロポーズですよね?
「結婚!?」
いきなり過ぎて普通に驚愕する。
だけど彼はまるでそれが当たり前のように…。
「そうだ。梓と結婚をする。だから梓はなんの心配もするな。」
そう言い切ると私に穏やかな笑顔を彼は向ける。
彼は笑顔になるとやたらと可愛い顔になる。
なのに私はわなわなと手が震える。
間違いなく私の中に怒りに近い感情が芽生えてる。
「梓?」
「嫌よ…。」
「梓?」
「嫌だと言ったの…。」
「だから、梓…?何が?」
「結婚は嫌だと言ったのよ!」
この時のショックを受けた彼の顔を多分、一生忘れられないとか思う。
「梓!?」
「帰って…。」
「梓…。」
「帰って!」
フンッとばかりに鼻を鳴らして彼から顔を背ける。
「梓…。」
さっきまでの素敵な声が情けない声になる。
それでも、ここは完全無視を決め込む。
そして、彼はまるで幽霊のようにフラフラと立ち上がり、ユラユラと私の部屋から出て行った。
杉田 梓…26歳
来年の春には27歳という結婚にはかなり敏感なお年頃の秋の事だった…。