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イかせ屋…2
第3章 その男、絶対的につき…
「お待ちしておりました。」
女将の態度からして身内ではないと何故かわかる。
どうやら知らぬ間に昌さんの身内と他人を嗅ぎ分けるというスキルを私は手に入れたようだ。
女将の案内で店の奥へと突き進む。
長い廊下を抜けると庭が見渡せる橋があり、その橋を渡って離れのような個室へと通される。
昌さんが広い座卓の前に座るから昌さんの前に座ろうとした。
「梓はこっちだ。」
昌さんが自分の右側を差す。
それって私が昌さんの上座になるんじゃないの?
そんな事を考える。
「京では古の並びで男が左側の上座と決まってる。雛人形もそうなるから関東とは逆なんだ。」
昌さんがそんな事を教えてくれる。
おおー!?
なんか凄い事を学習した気分になる。
お料理が運ばれて来る。
京風懐石…。
マナーがわからないから、どうして良いのかわからない!
昌さんがクスクスと笑う。
「梓の好きなようにして食べればいいんだ。」
「でも…。」
「その為に個室にしてる。マナーなんか考えてたらせっかくの料理が冷めて不味くなるだけだ。」
そう言われるから、とりあえず一口目をえいっ!と食べてみる。
嘘っ!?美味しいーっ!
薄味関西なんて絶対に嘘っ!
お出汁が効いてる分、関東よりも味が強く感じるくらいの美味しさ。
「美味しーっ!作り方を知りたいー!」
ご機嫌で食べる私を昌さんが穏やかな笑顔で眺める。
なんか…、ちょっと…、照れくさいです。
素敵な着物に美味しいお料理で京都に来た目的を忘れそうになった頃。
お料理の最後、水物と呼ばれるデザートが来た。
「もう…、食べれない。」
そう言いたくなるほどの立派な懐石のコースだった。