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イかせ屋…2
第6章 その男、王子様につき…
「何があった?」
シャワーを浴びて着替えた私に昌さんが聞いて来る。
今朝はルームサービスの朝食。
私の不機嫌にはとにかく敏感な昌さん。
パンをコーヒーで胃に向けて流し込む。
「実家なの…、年末に帰って来いって…。」
不機嫌なまま答える。
昌さんが眉を潜める。
「ご実家なら帰らないとダメだろ?」
「帰りたくないもん。」
「何故?」
「あの家に私の居場所なんかないから…。」
昌さんが驚いた顔をする。
別に家族の仲が悪い訳じゃない。
今は両親と兄夫婦とその子供が居る。
一応兄嫁と姑は仲良くやってる。
それでも私は帰りたくないと思う。
昌さんが心配をするから、ホテルを出て私の部屋に帰ってから普段着に着替えると昌さんには私の実家の状況を説明した。
父は農家。
母はその農家を手伝う専業主婦。
後は兄と私…。
そして、今は亡くなったけれど私が小さな頃は父方の祖母が居た。
私が実家を嫌いな理由のほとんどがその祖母が原因だと思う。
祖母は初孫であり、農家の跡継ぎである兄ばかりを可愛がる人…。
「女は嫁いだら終わりなんだから、勉強なんかするよりも家の手伝いをして家事を覚えた方がよほど可愛げがある。」
と私にいつも嫌味を言う人だった。
小学校の時も学校から帰ってテーブルにあったおやつを食べようとした瞬間…。
バシッ!
と私の手は祖母に叩かれる。
「正広が食べてないのに下の梓が先に食うとか卑しい事をするな!」
祖母がカンカンになって私を叱る。
正広とは兄。
おやつを食べるのも、お風呂に入るのも、ご飯を食べるのも全て跡継ぎである初孫が一番。
勝手に祖母が決めたルール。