この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
イかせ屋…2
第6章 その男、王子様につき…
お父さんは黙ったまま畑や田んぼで仕事をする無口な人。
お母さんは姑とは諍いを起こさない。
お兄ちゃんは別に意地悪ではなかったけれど
「梓もいい加減にばぁちゃんを怒らせて不機嫌にするのを止めろよ…。」
と私に偉そうに言う。
一番酷いのは、何でも兄のお古で充分という祖母。
お腹が空いたと言うと
「正広の食べ残しがあるからそれでも食っとけ。勿体ない。」
と言われ、学校の体操服が欲しいと言うと
「正広のお古があるだろ?」
と平気で言う祖母。
兄には何でも新しいものを買い与える祖母。
さすがにランドセルの時はお父さんが買ってくれたけれど、祖母からは
「あー…、勿体ない。女は嫁に出すだけなのに…。」
とまで言われた。
悔しくて中学生までは兄よりも出来る子を目指して勉強ばかりをした。
兄は顔は良かったが運動も勉強も苦手な男だった。
それでも祖母は農家の跡継ぎなのだからと勉強も運動も出来なくていいと兄だけを甘やかし続ける。
だから、私は高校をど田舎の中でも進学率の高い高校に行く事にする。
やっと祖母が亡くなった時は涙が出るよりもむしろホッとした気分だった。
兄は農業高校を出てお父さんと畑や田んぼに出るようになる。
その頃、兄に彼女が出来た。
顔は愛嬌があって可愛らしいけれど背が引くコロコロと太った彼女。
新子(わかこ)さん…。
通称…わかちゃん。
兄の同級生だったらしい。
初めて、うちに挨拶に来た時は手ぶらで来たわかちゃんにお母さんはブツブツと文句を言ってた。
でも、わかちゃんは食欲旺盛で健康優良児。
畑仕事はへっちゃらで肉体労働は任せて下さいという女の子。
兄の嫁にはピッタリだとお母さんもお父さんもすんなりとわかちゃんを受け入れる。