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イかせ屋…2
第6章 その男、王子様につき…
方や、勉強、勉強で田舎なんか大嫌いという私。
家に居るのは肩身が狭くて大学は都会の大学に行くと決めて東京の短大へ進学する。
お父さんは何も言わなかった。
黙って私に畑で出来た野菜や田んぼで取れたお米を毎月のように仕送りしてくれる。
それも短大を卒業するまでだった。
だって、兄と結婚をしたわかちゃんに初めての子供が出来た。
子供は初孫で跡継ぎの男の子。
風太(ふうた)君…。
その頃の私はもう就職してたし前の彼氏に夢中だった為に田舎の実家はどうでも良かったけれど、一応は甥っ子の顔を見に実家に帰ってみた。
その甥っ子は生後3ヶ月。
なのに早くも人見知りがあり、私の顔を見るなり大泣きをやってくれる。
私が近くに寄るだけで泣き出す赤ちゃん…。
お母さんからは
「風太のストレスになるから、梓は帰って来なくていいわよ。アンタも仕事ばかりしてないで、さっさと嫁にでも行きなさいよね。」
と言われる羽目になる。
またしても、初孫で跡継ぎという存在に私は実家での自分の居場所を失ったのだった。
「そんな実家に帰りたいとか思う?」
冷めた口調で昌さんを問い詰めるように聞く。
昌さんが私の額に優しいキスを落とす。
「それでも梓の実家で梓の家族だ。」
昌さんが私を慰めるように言う。
わかってる。
お父さんもお母さんも兄も嫌いな訳じゃない。
ただ、あの田舎が大嫌いなだけだ。
「一緒に行こう。」
昌さんが笑顔で言う。
「一緒に!?」
「梓をお嫁に貰うんだから、ご両親には挨拶をしない訳にもいかないし、近くにホテルがあるのなら俺はそこに泊まるから梓の実家に一緒に行こう。」
昌さんが一緒に行ってくれる。
それだけで私の気持ちが安らぐ。
「でも、大晦日は昌さんの…。」
お誕生日…。
「そんな事よりも梓の実家の方が大切だ。」
昌さんの言葉に涙が出そうになる。
昌さんと一緒なら実家に帰るのも怖くない。
いきなり大晦日に昌さんが訪ねるのは失礼だからと30日の日に私は昌さんと実家に行くと決めた。