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イかせ屋…2
第7章 その男、寛容につき…
12月の30日…。
朝から着物を着て帯を締める。
今や私の戦闘服。
完璧なセレブ女として実家に帰り、幸せな結婚をするのだと、あの田舎の家族に見せつけてやる!
そんな気合いが入ってしまう。
昌さんはいつも通りに穏やかでニコニコとしてる。
清さんの運転で高速道路を2時間以上も走り私の田舎へと向かう。
フラワーロード…。
なんて可愛らしい名前が付いてる新しくて綺麗な道路だけど普段は耕運機が走る農道です。
今は田んぼが禿げてるから寂しい景色を眺めて走るだけの道路…。
だから…、田舎は嫌いよ…。
本当は殺伐としてない田舎はそこまで嫌いじゃないけれど…、洗練された都会の京都を見た後だと何も無い田舎が恥ずかしくて嫌いになる。
「大丈夫か?」
昌さんが心配をして私の頬にキスをする。
「大丈夫よ…。」
昌さんの手を握る。
昌さんが居るから私は大丈夫…。
それだけを考えながら実家へと向かう。
少し狭い普通の道を走る。
民家はポツポツとあるけれど…。
隣りの家まで田んぼと畑があるから、私の家はポツーンと存在してるように見える。
舗装された道から剥き出しの土のままの私道へ入る。
立派な門なんか存在しない家。
一応、農家である為に土地だけは広いから、それなりの広さのある家ではあるけれども曽我家や藤原家のように立派なお屋敷と感じさせる家じゃない。
そんな家の玄関前に車が停まる。
昌さんと車から降りる。
昌さんが清さんに少し待ってろと命令する。
呼び鈴なんか鳴らさなくとも家の前に知らない車が停れば玄関の方へ向かってバタバタと賑やかな足音が聞こえて来る。
ガラリと引き戸の玄関が開く。
「嘘っ!?梓ちゃん!?」
わかちゃんの元気な声が始まりだった。