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イかせ屋…2
第7章 その男、寛容につき…
私だけが知らなかった家族。
私だけが見ようとしなかった家族。
今は私の好きな家族が居ると思う。
ビールでちょっと酔っ払ったお父さん…。
「離婚をしたら、梓はいつでも帰って来い。」
縁起でもないことを言わないで下さい!
「離婚なんかしません!」
「梓…。」
まだ嫁になんか行ってないのにお父さんが目をウルウルとさせて来る。
お母さんが呆れてる。
お父さんにはお父さんの思いがあって、お母さんにはお母さんの思いがあったんだと気付かされる。
兄ばかりを可愛がる祖母を私が嫌ったように兄は私ばかりを可愛がるお父さんが羨ましくてお父さんが喜ぶ農家の跡継ぎになった。
結局のところ家族は私が行き遅れになるのじゃないかと心配をしただけで、私が昌さんと幸せな結婚を出来るとわかれば納得をする。
夕食の後は昌さんに電話をする。
家族に話を聞かれたら恥ずかしいので廊下の隅で携帯を握る。
「ご飯は食べた?」
『梓は?』
自分の事よりも私が優先の昌さん。
「ちゃんと家族で仲良く食べたよ。」
『なら、良かった。』
「お父さんが明日は昌さんのお誕生日なら来て貰えって言ってるの。」
『本当に?』
「謝りたいけれど照れ屋さんだから謝れない人なの…、人見知りもあるし…。」
『是非、伺わせて頂きますと伝えてくれ。』
「うん、わかった。」
昌さんと離れてる距離を初めて感じる。
やっぱり昌さんが居るホテルに行きたくなる。
『じゃあ、明日…。』
「うん、待ってる。」
今すぐに来てと我儘を言う前に電話が切られて良かったとか思っちゃう。
「うわぁー!?ラブラブ…。」
背後からの声…。
「ひぃぃ!?」
悲鳴を上げて振り返る。
犯人はわかちゃん。
「いいなぁ…、『待ってる。』とかそんな乙女な事は長らくやってないわぁ。」
わかちゃんが私を冷やかすように言い兄との部屋へと消える。
乙女な事…。
恥ずかしさで全身がカッと熱くなる。
もう!やっぱり田舎者の家族なんか大っ嫌い!
そう叫びたい気持ちを堪えて客間に敷かれた煎餅布団で寝る羽目になった。