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イかせ屋…2
第7章 その男、寛容につき…



だから本当の意味で家族を嫌いにはならなかった。

むしろ、お父さんは大好きだった。


「正兄ぃは風太君の将来とか考える?」

「お前に似て頭が良ければ、風太には医者とか弁護士とか期待をするけれど…。俺と新子に似て馬鹿だったら農家しかないかと思う。今からの時代は農家でも馬鹿は困るけどなぁ…。」


兄がため息を吐く。

農家も品種改良でDNAの勉強とか大変な時代になってるらしい。

だから兄は自分ももっと勉強をするべきだったと後悔する。

最後がお母さん…。

夕食の用意を手伝いながらお母さんに聞いてみる。


「正兄ぃは跡継ぎの為だけに産んだの?私は嫁に出したら終わりの娘?」

「そんな事はないわよ。正広には期待をしたけど私に似て頭が悪かったから諦めただけ。」

「なら、私は?」

「梓は器用貧乏だったからねぇ。頭はいいくせに長続きしない子だった。ピアノをやらせても続かない。水泳も英会話も…。だから嫁に出すしかないのかと心配だったのよ。」


兄も私も最初から将来を決められて生まれて来た訳じゃないと知るとホッとする。

久しぶりに夕食を家族で食べて楽しいと感じる。

何故か風太君が私を見てモジモジとする。

相変わらずの人見知り君だと思う。

でも、わかちゃんの機嫌が悪い。


「風太の初恋みたい。梓ちゃんが綺麗だから近寄りたくても近寄れないんだって…。」


フグみたいに膨れっ面をするわかちゃんに向かって兄が


「そりゃ、梓と新子なら男は誰だって梓を選ぶ。」


と余計な事を言ったから我が家はちょっとした騒ぎになる。


「信じらんない!離婚をする!」

「いや、俺は梓の兄だから新子を選んだんだろ?」

「兄じゃなかったら梓ちゃんを選ぶって事でしょ?」


そんな夫婦喧嘩をお父さんもお母さんもよくある事だと笑ってる。



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