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イかせ屋…2
第8章 その男、酔っ払いにつき…
夕方には昌さんがやって来る。
「お邪魔させて頂きます。」
堅苦しく昌さんが言う。
お母さんの態度が変わってる。
「さぁさぁ、上がって上がって…、何のお構いも出来ませんがどうぞ。」
と昌さんを拐うようにして客間に連れて行く。
兄も態度が変わってる。
「昨日は親父が失礼をしてすみませんでしたね。今日はゆっくりしてって下さい。」
「不躾に押し掛けたこちらが悪かった事なので、今日はお招き頂いてありがとうございます。」
昌さんが兄とお父さんの両方に頭を下げる。
「うむ…。」
照れくさいお父さんがグラスに注がれたビールを飲み干した。
「お父さん!食事の前に余り飲まないで下さい!」
お母さんが叱る。
昌さんの為に用意をされた食事。
いつもなら大晦日の普通の食事。
今夜は昌さんのお誕生日だから特別な家族の食事。
私の家族が昌さんを家族として受け入れた記念すべき日になる。
「最高の誕生日になった。」
昌さんが笑ってくれる。
私が作ったケーキを風太君が欲しがるから慌ててローソクに火を灯して昌さんが吹き消す。
「願い事はした?」
「梓が居るから、これ以上の願い事はないよ。」
平気でそんな事を言う昌さんに兄とわかちゃんが赤い顔をする。
「結婚前のイチャラブって羨ましいーっ!」
わかちゃんが微妙に倦怠期な兄に向かって叫ぶ。
ちょっと恥ずかしいとか思っちゃう。
私だけしか見ない昌さん。
私の家族全員にも昌さんが私だけなんだと見せつけるように接して来るから私が昌さんに大事にされてる事はすぐに伝わった。
お陰で不機嫌なお父さん…。
「君の誕生日だ。だから、まぁ、飲め!」
昌さんのグラスにビールを注ぎ出す。