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イかせ屋…2
第8章 その男、酔っ払いにつき…
来た時と同じように清さんの運転で帰る。
ベンツのトランクルームには似合わないダンボール箱が積んである。
お父さんが今朝、畑で取って来た白菜やネギ、大根を詰めてくれたダンボール箱。
「清…、あまり飛ばすな。」
まだ二日酔いの昌さんが呻く。
私はご機嫌でフラワーロードの景色を眺める。
何もない景色…。
何もない田舎…。
それでも私の家族が居る。
家族がやっぱり大好きだと思う。
頭を抱える昌さん。
自業自得とは思うけど…。
やっぱり彼が大好きだと思う。
昌さんの耳元で
「お尻…、ちょっと痛かった。」
そんな言葉を囁いた。
昌さんが目を見開く。
「続きはするの?」
「梓はしたいか?」
「もしかして癖になる?」
「その為のイかせ屋だからな。」
二日酔いの頼りない顔で言われてもカッコ悪いとしか思えない。
「全部見せてよ…。イかせ屋さん。」
昌さんの全てを見せてくれる約束。
イかせ屋のテクニックも曽我 昌としての愛情も全てを見たいと私が願えば全てを見せてくれる昌さん。
「今夜は寝かせない。」
「その前に親分様にお正月のご挨拶。それに夕べの私は全く寝てないから今夜は寝ます!」
「梓!?」
「誰のせいよ?」
叱られた仔犬がしょんぼりとする。
さすがに運転中の清さんが吹き出した。
普通のお正月がイかせ屋の男とは普通じゃなくなる。
真っ直ぐに曽我の家に向かい親分様に私の実家で取れた野菜を渡してご挨拶をする。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!」
「こちらこそ昌をよろしく頼むね。」
「今夜はお鍋にしましょうね。」
親分様が私に優しい笑顔を向けてくれる。
ここが私の新しい家族の始まりだと感じる。
私の家が2つになったのだと感じる新たな年が始まった。