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イかせ屋…2
第9章 その男、ヤキモチ妬きにつき…
むしろ、仕事に行けば私が傷つくからと遠慮してくれてたのに…。
「なら、無理に迎えに来なくて良かったのに…。」
「そうみたいだな。」
やっと不機嫌な理由を理解した。
植草君の事を昌さんは気にしてる。
「植草君とは偶然会ったのよ。同じジムに来てるんだって…。」
「そうか、それは良かったな。」
昌さんがシガリロに火を点ける。
甘い香りが車の中を漂う。
これ以上は話をしても無駄だと思う。
前にも植草君の事については何度か話をした。
風俗であるイかせ屋が嫌なら普通の人である植草君と付き合えばいいという考えの昌さんだったから、私がイかせ屋の仕事を納得するという条件の元に植草君とはもう会わないと約束もした。
その約束を裏切ったと昌さんが感じてるのかもしれないと思う。
今夜…、帰って来たら話をしよう。
そう考えるしかなかった。
その夜は昌さんが帰って来なかった。
そりゃ、本来の昌さんは曽我のお家に住んでるから私の部屋に帰って来なくとも問題はないのだけれど、こんな事は初めてだからとちょっと狼狽える。
そんなに植草君の事が気になる?
ちょっと会話しただけじゃん?
ヒロ君や清さんにも基本的に私には近寄るなと徹底する昌さん…。
結構、嫉妬深い?
風俗の男のくせに…。
風俗の男だから?
昌さんのお客様の中に夫がもう役に立たなくなったからとイかせ屋に依頼する奥さんが居るとヒロ君から聞いた事がある。
女は平気で浮気すると思ってる?
イかせ屋の男は弱い生き物なんだと言った清太郎さんの言葉が蘇る。
昌さんを傷つけるのだけは絶対に嫌だった。
ため息をついてケーキを作る。
昌さんが好きなフロマージュ…。
チーズが好きだから…。
ふわふわしっとりの食感になるように丁寧に作る。