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イかせ屋…2
第9章 その男、ヤキモチ妬きにつき…
「わざわざ来て言う事はそれ?」
こんな風にはなりくないのに怒りが湧いてしまう。
車の中に充満する甘ったるい匂いに吐き気がする。
「だから来ない方が良かったと言ってる。」
「そうね…、お互いの為にその方がいいみたい。」
車が私のマンションの前に停まる。
私が降りると昌さんも降りて来る。
「今日は来ないで…。」
「梓…。」
「来ないで…。」
昌さんがどんな顔をしてるのかすらわからない。
涙を見られるのが嫌ですぐに昌さんに背を向けて部屋へと飛び込む。
終わった…。
そう思う。
私ってやっぱり馬鹿な女のままだ。
つくづくそう思う。
昌さんを知りたいと願った。
昌さんを知れば知るほど私とは感覚が違うと感じた。
焦って昌さんに相応しい女になろうとした。
着物が自分で着れる女に…。
ケーキが作れる女に…。
レストランで食べられるような料理が作れる女に…。
自分のレベルが上がれば昌さんの傍に居られると大きな勘違いをしてた。
昌さんとの絆なんかこれっぽっちも築こうとして来なかった自分に気が付く。
初めは結婚を嫌だと我儘で昌さんを困らせて、次は跡継ぎを産むのが怖いと言い訳をして、結局は未だにピルを止めてない。
昌さんが私の望みを全て叶えてくれてるのに、私は昌さんの望みを蔑ろにしたまま…。
笑っちゃう。
涙を流しながら1人でずっと馬鹿な自分に笑う。
誰でもいいから助けて欲しいとまで願う。
素直に昌さんに謝れば、すぐに昌さんが私を助けてくれる事はわかってる。
だって、彼はイかせ屋だから…。
女性を泣かせたりしてはいけないイかせ屋だから…。
だけど、曽我 昌はどうなの?
私が泣いても仕方がないと思ってる?
今は、どうしてよいかわからずに泣きながら眠るしかなかった。