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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第8章 ビスカスくんの一番長い日
「んな事、出来る訳ねーでしょうが!」
俺は思わず吐き捨てた。

「お嬢様は、招待客ですぜ?主役ならともかく男の方が小せぇ組み合わせの招待客が余興に参加すんのなんざ、見た事も聞いた事も無ぇよ!もし居たら、笑い物でさあ!」
それ以前に、だ。
お嬢様をくるくる回すなんざ大それた望みだってことも、ガキの時分の俺にゃあ分かっちゃ居なかった。
大人の余興で男が女を回すのは、遊びじゃ無え。ありゃあお約束だ。小難しく言ゃあ儀式だ。大人のくるくるにゃあ条件が有んだよこの糞ガキの馬鹿野郎、と昔の脳天気な俺に教えてやりてぇよ。
お嬢様は、静かになった。
静かにゃなったが、顔色が悪い。どう見ても酔っ払いだ。
熱も有るかもしれねーし、ご自宅だったら丸め込んでお部屋にお戻りになって貰うとこだが、生憎ここはサクナ様んちだ。この仕様の無え酔っ払いをどうしたら良いもんかと思案していると、お嬢様がぽつりと呟かれた。

「…約束、したのに……嘘吐き。」

刺さった。
お嬢様の、「嘘吐き」が、刺さった。
そりゃもう思いっ切り、ぐっさり刺さった。

「…誰の」
誰の為だと。
その言葉の後ろ半分は、飲み込んだ。

俺は、嘘を吐くのは平気な奴だと思われている。
平気ですよ?方便ですからね?それに、嘘は得意だしね。
だが、この世の中で一人だけ、俺が単なる嘘吐きだたぁ思われたく無ぇ御方が居る。
お嬢様。
俺が嘘吐くのは、半分位は、あんたの為なんですよ。別に、分かって欲しい訳じゃあ無ぇが、せめて、そんな風にゃあ言って欲しく無え。そんな事言われちゃあ、これから嘘が吐けなくなっちまうかもしれねーじゃねぇですか。あんたを守る為の嘘が吐けなくなっちゃあ、俺ぁ仕事になんねぇんだよ。そしたら、用済みのお払い箱だ。
下品だのあっち行ってだの最低だの顔も見たくないだの馬鹿だの出ていけだの恥知らずだの大嫌いだの寄らないでだの言われても罵詈雑言リストが増えるだけでちっとも堪えねぇが、これだけは駄目だ。

「…お嬢様」
「何よ」
お嬢様の言葉に刺されて痛くて力が入らねぇなりに声を絞り出したら、お嬢様も同じ様に、どっか痛ぇ様な顔をなさってた。
…なんでだよ。
なんで、そんな顔すんですk

「お前ら、こんなとこで何やってんだ」
「!!」
「うわっ!」

出た。出たよ。
突然、この家のご当主様が出た。
俺(と、多分お嬢様も)は、本気で魂消た。
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