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SSS
第8章 彼を隔つもの
“野球部が全国に行けますように”
我ながら女々しいとも思う
でもまぁ、書いておいて損はないか
「へぇ、凪もこういうの書くんだね〜。意外」
「なっ、美……っ…川本!」
短冊を笹に結び付けていたところへ、後ろから声を掛けられる
凪は少し耳を赤くして顔を逸らした
「別に良いだろ」
「誰もダメなんて言ってないし」
「……」
七夕まであと二週間
学校の玄関先に立てられた笹の木には多くの願い事が吊るされている
“–––くんと仲良くなれますように”
“受験が成功しますように”
「……行けるといいね、全国」
美和は凪の願いに触れながらそっとそう言った
「当たり前だ」
この一年と少し、全てをかけて打ち込んできた
絶対に行ってやる
あいつら–––あの野球部の仲間と。
「わ……っ!」
突然玄関から強い風が吹き込み、笹と短冊を大きく揺らした
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