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SSS
第6章 たとえ貴女に逢えなくても
特に動揺を隠しきれないのは、リーとともにサラディ家と闘ったガロ一族だ
「……どういう意味だ」
「やはりヴィークの人々は我々にも必要です。彼らには学ぶべき点が多くある。
交易や領土の利益を超えた、互いの発展と幸福を望むのは青臭いと思いますか」
本来なら長だけの会合で話し合われるようなことをリーがあえてこの場で口にしたのは訳があった
すべてのケチュア人に、訴えたい
ヴィークの人々の温かさを。
彼らも自分たちと変わらぬ人間であるということを。
我々を知ろうと手を差し伸べ、互いの幸福を祈った少女とその恋人がいたことを–––。
「だがヴィークには、サラディ家がいる。我々の誇りを傷つけ、そのためにお前も闘ったのではなかったか」
「今はそうでも、いつかは変わる。
当主のカレルはまだ若い……俺が生きている間には実現しないかもしれない。
それでも」
先の見えぬ未来でも、強く進んで行った彼らのように。
「俺は諦めません」