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本の夢…
第11章 バイバイ…
大人の本…。
ありとあらゆる職種に必要な資格の勉強をする為の本などもある。
閉館時間まで30分…。
もうあまり時間がない。
早く見つけなきゃ…。
それだけを考えながら本棚の通路を1つずつ丁寧に見て回る。
通路の向こうに人がいる。
白いシャツ、長い足…。
背中しか見えないけれど私にはわかる。
あの日、ダッフルコートに隠れた私を見つけた先生の気持ちがよくわかる。
「司書教諭になる為のお勧めの本はありますか?」
その人の背中に向けてそう言った。
ゆっくりとその人が振り返る。
メガネをかけた男の人。
胸には『Staff』と書かれた身分証を付けている。
鋭い目、高い鼻に薄い唇。
「これをどうぞ。」
男の人が私に一冊の本を渡して立ち去った。
『司書になる為に…。』と書かれた本。
パラパラとその本をめくる。
1枚のメッセージが書かれたメモ。
『バラ園で…。』
たったそれだけ…。
胸が熱くなった。
泣きそうになる自分を堪えながら、その本の貸し出し手続きをして貰う。
閉館時間丁度に図書館を出た。
バラ園のガゼボでその本を読みながら、あの人を待つ。
1時間ほどしてガゼボに足の長い男の人が来た。
「やっと見つけてくれた。」
その人がふてくされた顔をする。
「だって…、先生…。」
笑っちゃう。
「こんなやり方をしてごめんな。」
「わかってるよ。学校の先生のままだとダメなんだよね?」
「そういう事…。」
あのまま先生が学校の先生を続けていたら後数年は私との関係を公に出来ない。
だから、先生はこの図書館の職員募集で転職をした。