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本の夢…
第11章 バイバイ…
「ちゃんと見つけたよ。」
「毎日、夢が早く気付いてくれないかと僕は眠れなかったよ。」
先生の部屋は私の部屋の真上。
確かに、もっと早く気付いても良かったかもしれない。
「僕が居なくても夢は平気だった?」
ずっと先生が拗ねている。
平気だった訳じゃない。
ただ、私の感覚でいつも先生に見守られている感覚が終わっていなかっただけだ。
図書館で本を読む私をずっと見守ってくれた先生。
その感覚が今まで続いていたから本当の孤独を感じなかった。
自分が道を間違えずに前にさえ進み続ければ、いつか必ず先生にはまた会えると思っていた。
「父さんに聞いても夢は毎日食欲があって元気だとしか教えてくれないし…。」
とうとう先生がいじけ出す。
だからマスターがわざわざ図書館のオープンでお店が忙しいのに図書館に行って来いと私に言ったのだと呆れちゃう。
いじける先生を抱きしめる。
もう先生に抱きしめて貰うだけの子供じゃない。
「卒業式の日…、いっぱい泣いたんだよ。でも、先生に教えて貰った事を守って頑張れば絶対に先生に会えると信じてたよ。」
「今も僕の夢…?」
「ずっと先生の夢だよ。」
あの日から本の夢じゃなくなった。
あの日から先生の夢になった。
これからも私は先生の夢…。
そして私の夢の為に必要な事は全て先生が教えてくれる。
私の大好きな本の先生…。
私が愛してる雷生さん…。
「2度と黙って消えないで…。」
「消えたりなんかしないよ。僕はずっと夢のそばに居るのだから…。」
何度も愛おしげに私にキスをしてくれる。
この人となら本の世界を出て現実という厳しい世界を生きていけると感じる。
バイバイ…、本の夢…。
fine