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本の夢…
第9章 海よりも…
夏休みの残りが僅かになる。
9月には大学への出願が始まり、10月までに入試、面接などをクリアすれば11月には合否が決定する。
2学期が始まれば、先生とは話すら満足に出来ない。
「海に行こう…。」
図書館を閉めた先生が言う。
「海に?」
「そう…、夏休みの最後のデートは海にしよう。」
「本当に?」
「日帰りにはなってしまうけれど、1日くらい楽しむ日が夢には必要だよ。」
先生が笑顔を見せてくれる。
私の誕生日から、図書館での勉強は小論文の準備に費やして来た。
万が一の為に、先生からは
「推薦でも合格が出来ない場合を考えて一般入試の勉強もしっかりとやりなさい。」
と言われて先生とは10分くらいキスだけをしたら、家に帰って机に向かうという夏休み。
私が勉強、勉強でノイローゼにならないか心配だと先生が笑う。
「大切な目標があるからノイローゼになんかならないもん。」
「でも、僕は夢の水着姿を見たいんだよ。」
「そっち?」
「男とは、そういうものです。」
今日は水曜日…。
次の日曜日に先生といつもの駅で待ち合わせを決めた。
そのせいで少しだけ図書館から出るのが遅くなった。
夏休みは3時までの図書館…。
いつもなら10分くらい遅れて図書館を出る。
一応、人が居ない事を確認して図書館から出るようにしていた。
今日は4時になっちゃった。
今日もいつものように気を付けていたつもりだった。
図書館を出て中庭を抜けようとした瞬間…。
「今日は図書館はまだやっていたの?」
心臓が止まるかと思った。
声の方へ振り返る。
バレンタインデーの時の女の子が不思議そうな顔で私を見ている。
「確か…、7組の…。」
「佐川 愛梨(あいり)。5組の上垣さんだよね?」
目の下に真っ黒なクマを作った彼女の落窪んだ目にゾッとした。