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本の夢…
第10章 卒業
「ご飯を食べる時間が無くなった…。」
先生が私を抱きしめたままそう言った。
2時間だけのつもりが4時間も先生と抱き合った。
もう私は帰る時間…。
「クリスマス…。」
「クリスマスだ。」
先生とのキス…。
もうクリスマスまでお預け…。
シャワーを浴びて慌てるようにしてホテルを出た。
家まで送って貰えないから少し手前で車から降りる。
そこからはタクシーに乗る。
お金はいつも先生がくれる。
要らないと言ってもこれだけは譲らない先生。
「変な人に夢が襲われたら死にそうになる。」
しかめっ面で私を叱るように先生が言うから私は先生の言葉に従う。
「もう勉強以外の事は考えないから襲われたりしないよ。」
先生の為に無理に笑顔を作る。
「愛してる。」
車から降りた瞬間、そう聞こえる。
返事を返せないまま私がタクシーに乗ると空色の車が立ち去った。
愛してる…。
だから…、先生…。
待っててね。
私が先生の為に何かが出来る大人になるまで待っていて下さい…。
タクシーの中でそんな祈りを先生に捧げていた。
私の夏休みは終わった。
2学期…。
授業に集中をする。
毎日、図書館には通うけれど先生とは目も合わさない。
前は1日が長く感じたのに…。
今は足りないと感じるくらいに短い。
時間が足りない。
もっと本を読み、もっと勉強をしなければと心が焦る。
無我夢中の9月が終わる…。
10月に試験…。
小論文はしっかりと書けた。
面接で
「何の為に大学に来るの?」
と聞かれた。
「誰よりも本を読んだ自信があります。その本の素晴らしさを教える事が出来る司書教諭になりたいと思ったから、大学に進みたいと思っています。」
胸を張って答える事が出来た。