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愛の終わりは最高のデートで幕を下ろそう
第1章 愛の終焉

【わたしの中に海がある】
わたしの中に忘れられない海がある。心深くに刻んだ海がある。
銀色に輝いて煌めく波。遠くなるにつれ重なり碧く霞み、真っ青な空とひとつに溶け合う水平線まで続いて、そのゆらゆら揺らめく遥か水平線の辺りに白い船がいる。
毎朝訪れる岬の崖から、今わたしが見ているブルターニュの深い翠色の波が寄せる海ではない。
それは遠く離れた祖国の海。わたしの奥深く大切に仕舞い込まれている遠い日の記憶。
今は亡きフランス人の夫との間に奇跡的に授かった息子もとっくに独立して自分一人になり、ガランとしてしまった海を望む家で暮らしながら、いつに間にか頭上に霜を置く歳になって人生の黄昏時を迎えても、忘れられない決して忘れない若き日の景色。
海からの湿った風が頬を撫でて髪をもてあそぶ。
香りも感触もあの日の海とは似ていないが、目を閉じるとそんな些細な違いなど感じなくなって、わたしの中の海の記憶が広がり、いつものようにわたしを包んでゆくのだ。
わたしの中に忘れられない海がある。心深くに刻んだ海がある。
銀色に輝いて煌めく波。遠くなるにつれ重なり碧く霞み、真っ青な空とひとつに溶け合う水平線まで続いて、そのゆらゆら揺らめく遥か水平線の辺りに白い船がいる。
毎朝訪れる岬の崖から、今わたしが見ているブルターニュの深い翠色の波が寄せる海ではない。
それは遠く離れた祖国の海。わたしの奥深く大切に仕舞い込まれている遠い日の記憶。
今は亡きフランス人の夫との間に奇跡的に授かった息子もとっくに独立して自分一人になり、ガランとしてしまった海を望む家で暮らしながら、いつに間にか頭上に霜を置く歳になって人生の黄昏時を迎えても、忘れられない決して忘れない若き日の景色。
海からの湿った風が頬を撫でて髪をもてあそぶ。
香りも感触もあの日の海とは似ていないが、目を閉じるとそんな些細な違いなど感じなくなって、わたしの中の海の記憶が広がり、いつものようにわたしを包んでゆくのだ。

