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愛の終わりは最高のデートで幕を下ろそう
第2章 二人のラスト・ドライブ
彼のメルセデスで東京を朝7時に出発。

オートマチックの輸入車が多い中、このアイボリーのメルセデスはマニュアル車である。夫の「車はマニュアルでないと運転している気がししない」という拘りだった。

そしてこの車は電動トップのカブリオレ。ボタン一つで屋根の開閉ができる。

「新婚旅行で行ったパリとか?」
「うん。あの時はまだ財布の中身が苦しかったから大して観光もできなかったし、それに泊まったホテルも酷い代物だった」
「エレベーターは年代物で壊れていて、ベッドもスプリングが飛び出して半分壊れていて、洗面所の蛇口を捻ったらガボッと大きな音がして茶色の水が出てきたわ」
「そうそう!そうだった。よく覚えているね」
「忘れないわよ。あんな酷い新婚旅行。でも、とても楽しかった」

そう。忘れない。絶対に忘れない大切な思い出。あなたと共に生きて、今のわたしになったのだから。

結婚してからは仕事が忙しくて思い出らしい思い出はないけれど、それまでの楽しい幸せな記憶を胸に抱いて生きて・・今日この日を迎えたんだ。
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