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第12章 繁殖

「うぎゅ！？」

「起きろ…、行くぞ。」


私の鼻を摘んで透が言う。

夕べまで店で仕事やったから夜中に帰って来たくせにと言いたくなる。

今日から透だけが店を休む。

遼さんは休みを取らないらしい。

だから透は私と旅行をすると言う。

朝から叩き起こされて荷物と一緒に車に積み込まれてた。


「なんで和歌山やねん？」

「イルカが好きやろ？」


透が笑う。

この笑顔には勝たれへん。

そう思うから文句は無し。

ほんまは透だって眠たいのに私の為にと機嫌良く運転をしてる。

途中のサービスエリアで朝食を済ませて２時間半のドライブをする。

最初の目的地はサファリパーク…。

透が見たいもんがあるからとサファリのオプションを申し込んだ。


「わざわざオプション？」

「普通に乗り合いバスみたいなんに乗って動物を見てもおもろないやん。」


意味深な事を言う。

だけどオプション付きの車は時間が限定されてる。


「先に適当にパンダでも見るか？」


透とパンダが居るという建物に向かう。


「パンダの展示施設じゃなくて繁殖研究施設って考え方らしいぞ。」


そんな説明を透がしてくれる。

東京の動物園ではパンダの繁殖がかなり騒がれたりしてるけど、白浜じゃ毎年のように赤ちゃんが生まれて中国に返せるくらいまで繁殖に成功をしてる。


「そんなに凄い事なんか？」

「それだけここでは自然に近い形で展示が出来てるって事やろ？普通の動物園じゃ予算的にそういうのが難しいらしいからな。」

「ふーん…。」

「朱音も俺と繁殖を研究するか？」

「せんわっ！」


エロガキを蹴飛ばしたくなる。

カッコいいくせにお馬鹿を見せる透に笑ってまう。