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嘘やろ!?
第26章 子守り唄
その日から透は人の記憶をまるごと記憶出来るAIの研究を始めた。
「記憶の記録があれば、認知症の人でも思い出す事が出来るようになるかもな。」
遼さんを失う恐怖と透はそういう形で戦い出す。
私はそんな透を家族として支えてやる事で遼さんを失う恐怖に立ち向かうしかなかった。
月に一度の面会…。
遼さんは私と透を見て目を細めて考える。
考えなければ私達を思い出せないからだと感じる、この瞬間が一番辛い。
「親父…、身体は元気か?」
透が話し掛けると息子だという事は思い出す。
「ああ…、まだまだ元気だ。」
無理に笑顔を作る。
けど名前が出て来ないんや。
遼さんの辛そうな顔がそれを物語る。
「元気ならええんや。」
透も遼さんに辛い顔をさせたくはないから息子とわかっとるんなら構へんと話を合わせる。
「慎也さん、無事に離婚したで…。千里さんと一緒になるんやて…。」
「そうか…。」
ほんまは慎也さんが誰なのかすらもう遼さんにはわからん。
泣きそうになるけど遼さんに2度と涙は見せんと決めた以上は笑って遼さんと透の会話を見守る。
「そんでな…、朱音が妊娠してん。」
透が照れた顔で報告をする。
遼さんが目を見開く。
何かを思い出したらしい。
「ほんまか?良かったな…。透…。」
やっと透の名前を思い出した遼さんに透が泣いてた。
「親父みたいな父親になったるから…。」
透はそれを言うだけが精一杯やった。
「透…、あの歌…、歌たれよ。」
遼さんが言う。
遼さんの子守り唄…。
「わかっとる。」
透が俯いてまう。
だから私は透に寄り添ってやる。