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嘘やろ!?
第5章 Barのマスター
「俺な中学ん時に事故で両親をいっぺんに失ってん。いわゆる孤児(みなしご)いう奴やな。」
遼さんの話は唐突に壮絶な部分から始まった。
親戚の家を転々とした遼さん。
それでも成績優秀だった遼さんは奨学金を受け、関西でもトップクラスの公立高校からストレートで国立大学の医学部に行ったという。
まさかと思った。
金髪のチャラい系イケメンが医師免許を取ったと言う話が信じられないと思ってまう。
「なんやねん?その顔…。証拠を見せたろか?」
私の反応に遼さんがふてくされた顔をする。
あまり疑うと話が横道に逸れそうだからとふるふると首を横に振った。
「まぁ、ええわ。はっきり言うと大学時代って俺は人生の頂点みたいに浮かれててや。なんせ、この顔で医学部やろ?女なんか毎日が違う奴を抱けるくらいの天下やったんや。」
ニヤリと遼さんが笑う。
それって何の話やねん?
私が睨むと遼さんがゴホンと咳払いをする。
「けど、天下やったんは大学までや。研修医が始まると天国は一気に地獄に変わったわ。」
親が開業医の子供はともかく、孤児の遼さんは公的な病院の救命処置などでキツい仕事をする見習い生活。
給料はバイト並…、そこへ重ねて奨学金の返済。
昼間だけでなく病院に泊まり込んで夜間のシフトも働く羽目になる。
「そこへ、あの女がデッカイ腹を抱えて現れた。」
あの女とは透の母親…。
『あんたの子よ。遼…。』
そう言われても遼さんは納得しない。
『悪いが俺は必ず避妊しとる。』
『ああ、遼のコンドームなら全部を針で穴空きにしといたわ。』
その女からそう言われて遼さんの本物の地獄が始まった。
安いアパートを借り、安い給料で愛してもいない女房を養う。
この時は僅か24歳の遼さん…。
「それでも、透が生まれた時はなんや知らんけど涙が出るほど嬉しかったんよ。ずっと孤児やった俺に本物の家族が出来たんやってな。」
遼さんが照れくさそうにニヤリと笑った。