この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
嘘やろ!?
第5章 Barのマスター
だけど透のお母さんの方は違ったらしい。
安い汚いアパート。
貧しく苦しい生活。
生まれたばかりの透。
ほとんど帰って来ない遼さん…。
ある日、仕事明けに遼さんがアパートに帰ると透の泣き声がした。
慌ててアパートの部屋に入ると床に寝かされた透と1枚の置き手紙。
『透はあなたに任せます。』
まだ透は生後六ヵ月…。
遼さんは表情を変える事なく淡々と話すけど、聞いている私は胸が締め付けられて息が出来なくなりそうになる。
「俺…、人生で何回も見捨てられてるからな。」
あの時にそう言った透の言葉の重さを今になって感じてまうから押し潰されそうになって来る。
「大丈夫か?」
心配をする遼さんが私の背中を摩ってくれる。
はぁはぁと浅い息をしながらコクコクと頷いた。
透…。
透の為やから…。
私がちゃんと話を聞いてやらんと…。
大きく深呼吸をしてから必死になって遼さんの話を聞いてた。
「正直に言うと焦ったよ。赤ん坊を抱えて、これ以上は医者の仕事は無理やと思った。そやけど一流大学卒業や言うても所詮は医学部やろ?そうなると一般企業は簡単には雇てくれへんねん。」
ましてや子持ち…。
バブルは崩壊をした後…。
幼い透を抱えて路頭に迷いかけた遼さん。
ある株式投資に手を出した。
「まぁ、天才って奴は何をやっても天才なんや。」
なんや遼さんが調子に乗って段々とチャラい言い方で話をする。
100円代で買った株が僅か3ヵ月で2万円代に跳ね上がった。
遼さんはその株には10万を投資してたらしい。
あっという間に2000万円…。
「それを元金に色々と他の株に手を出したわ。」
1年後の遼さんは働かずに2億を手にしてた。