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嘘やろ!?
第7章 妖怪退治
副学園長に言われて中野先生は自分の席へと大人しく引き下がった。
副学園長が透の解答用紙をしばらく眺めてた。
「でもね…、楠木先生。吉岡君は本当に国立大学に行きたいと希望をしてるんですか?」
副学園長の言葉に対して返答に詰まった。
透の希望…?
私が望めば透は大学に行ってくれる。
でも、透の希望は?
本当の透の気持ちを1度も話し合ってなんかいない。
「吉岡君なら私も知ってます…。」
副学園長がゆったりと穏やかな笑顔を見せて来る。
「彼はほんまに凄い子です…。だからこそ、難しい子でもあります。彼の本音はいつも私達教師の計り知れないところにある。そんな子を凄い子だからというだけで大学に通わせるのは本当に彼の幸せになるのか?そこを踏まえて吉岡君とよく話し合って下さいね…。」
副学園長はそう言って私の机から離れてた。
透の幸せ…?
考えた事もなかった。
透はいつも私の幸せを考えてくれてるのに…。
まさに教師失格やな…。
泣きたい気分のまま、出来るだけ採点という仕事を済ませる作業に没頭をした。
翌日もテストは順調に進む。
透は相変わらず…。
10分だけでテストを済ませると眠る透。
副学園長の言葉を何度も考える。
夜に働く透に難しい国立へ行かせるのは本当に幸せなのか?
別にもっとレベルの低い私立でも良い気もする。
学費は多分、透は自分で払える。
透を欲しがってるというIT企業に入るには大学卒業の方がええというだけで国立がええとは透は言うてなかった。
ただ、透の部屋の青いシーツのベッドの上にあった赤本が国立大学の赤本だったというだけだ。
国立に行かせたいと思ったのは私のエゴ?
それは透の女として?
それとも教師としてのエゴ?
なぁ…、透…、教えてや。
アンタが教えてくれへんと私はなんもわからへんままになってまうわ。
ずっと透に聞きたい言葉を飲み込み続けるテスト期間だった。