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きっかけは映画館
第14章 謎のツケ
温かいヒジオともう少し一緒にいてもいいなって思ってはいた。
でも、自分の気持ちも、裕司への気持ちも良くわからないの…
「考えさせ…」
「ない。だから、見合いじゃないんだし、ここで結婚を決めてって言ってるんじゃないんだ。
考えて出る答えじゃない。
好きになれるか、嫌いか…
それには、もっとお互いのこと知らないと…だから、付き合って?」
「でも…」
「まだ、恋人ってわけじゃなくていいから、麻里絵ちゃんが気になる人が現れたら、振ってくれていいから…」
「わ…わかった…」
真剣なヒジオがフッと柔らかい表情になって、
グッと手を伸ばしてくる。
「これから、よろしくね…の握手。」
私も同じように手を差し出すと、ギュッとヒジオに掴まれて握手した。
でも、友情の握手じゃない。優しく包んで…また親指でなぞられた。
「も…もう、いいでしょ…」
「ん…」
ヒジオは色っぽい表情で、名残惜しそうに、手を離した。