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きっかけは映画館
第17章 帰り道 part2
「土方さん…すみません。」
「優希ちゃん気にしないで、ほら、難攻不落の間宮嬢をって、チャンスだから…」
「だからって、麻里絵先輩に変なことしないでくださいよぉ?」
「もちろん、もちろん…大事にしますから…」
ってか、君たちと知り合う前に変なことはしちゃってるし、でもね、俺、本気だから、酔った相手をどうこうなんて、考えてない。
麻里絵ちゃんは、優希ちゃん達のおめでとうの乾杯の後、そのまま飲み続けて…テーブルに突っ伏した。
部屋の角に寄り掛からせて休ませたけど、一向に起きる気配もなく、最後に合流した晃君がある程度、腹を満たすまで居て、回復を待ったけど…無理だった。
優希ちゃんが言うには、ランチの時も、ここについた時も、ぼぉっとしてて、疲れてるのかもしれないって…
先に帰るからわからないけど、毎日終電近いはずだって…
だから、俺がタクシーで送ると話して解散にした。
麻里絵ちゃんの肩を抱いて立たせる。
優希ちゃんが靴を履かせなきゃならないほど、寝てるというのか、酔ってるというのか…
だけど、麻里絵ちゃんがポソッと言ったんだ。
「けっこん…」って…
優希ちゃんの話だと思ったら…
「ゆうじ」って…
悔しいけど、まだ麻里絵ちゃんの中には、『ゆうじ』がいる。
ストラップは着けてるけど、ブレスレットはしてくれてない。
俺は、まだ麻里絵ちゃんの記憶には残らない存在なんだ。