- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
きっかけは映画館
第25章 キッチン
麻里絵ちゃんについていってキッチンに入る。そこは俺にとって湯を沸かすところなんだけど…
「ヒジオ…ついてきて料理出来るの?」
「いや、一緒にやる。」
「何を?」
一緒にやることといったらアレしかないだろ〜よ…
なんて言ったら、『邪魔。』って返ってくるのは百も承知。
「手伝い…実家にいた時は、お袋によく手伝わされたんだ。
これを焼けとか揚げろとか、湯に突っ込めとか…
だから料理の名前とか味付けとかがわからないけど、言われたことは手伝える。」
「ふうん…」
麻里絵ちゃんは全く信じてない感じ。
買い物の時、『米びつある?』って聞かれて、何だろそれって思ってたら、普通に米を買ってたから、方言かなって納得した。
「まずはご飯を炊かなきゃね。」
シンク下の引き出しにしまわれた米袋を開けて、カップで取っている。
「麻里絵ちゃん、それ、出来るよ?」
「お米といだことある?」
「洗うんでしょ?」
3合って言われたから3杯入れて、ザルとボールで洗った。
「ねぇ、じゃあこの炊飯器は未使用?」
「ああ、引っ越しの度に新品のまま俺について来てる。」
「はぁ、どおりで綺麗なわけだ。」
俺が米を洗ってる間に、麻里絵ちゃんが作ったタレに肉を浸けてキャベツを切り出した。
「何を作るの?」
「生姜焼き。」
「俺、大好物。」
「ふふっ、ヒジオに焼いてもらうわ。」
お風呂の時に、一緒に入ると言われて驚いた。ヒジオの家のバスルームはファミリーサイズで確かに広いけど、裕司とはそんなことしなかった。
先に入るように言われて、湯船に浸かる頃にやってくるのが『一緒に入る。』ってことだった。洗面所を使うのも何もかもが時間差攻撃で、狭いアパートでの時短利用。
お互いにそれに慣れてたから何も思わなかったけどヒジオは違う。逆に何でも一緒にしていくようだ。
料理出来ないと言ってたのにキッチンに入ってくるから訊いたら、手伝うって…
逆に裕司はある程度料理は出来るけど、一緒の時はキッチンに入らずどっちの家でも私だけが作ってた。
ヒジオとの生活は何でも一緒。新鮮だし楽しいと感じた。
フライパンを熱して焼くのを頼んだら焼き始めて、タレはちゃんと取ってある。全体的な作り方を知らないだけで、料理は出来るんだ。
一緒に作ったものを一緒に食べる。ヒジオスタイルは楽しかった。