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きっかけは映画館
第29章 おうちで映画part2
「金曜日に嵐が来たみたいに、麻里絵ちゃんがやって来て、そのまま雪崩れ込むようにこうしているけど…
正直、不安だし、俺からきちんと言ってない。
麻里絵ちゃん…、改めて…、俺ね、真剣に付き合って欲しい。本気なんだ。付き合ってください。」
ホラーの話から、仕事の話へと移ったと思ったら、ヒジオから改めての交際の申し出。
私は素直に、今、思っていることを答えた。
「あの映画は、裕司との約束で、意地でも見たくて…
裕司について行けないと返事したけど、嫌いになって別れたわけでもないから、
映画を観て、気持ちの整理をつけようと思って行ったの。
なのにヒジオに痴漢されて最悪だと思ったし、サイトのことを考慮しても好きになれっこないと思ってた。」
「ごめん。」
「リベンジの時も、優希ちゃんと観た感想を話すことになってたから、優希ちゃんに言われて行ったし…
それ以上は絶対にないと決めてた。
泣いちゃって…一人が寂しくてヒジオに甘えたけど、
付き合うって言っても、裕司と別れたばかりなのにいいのかな?とか、裕司への思いもよく分からなくて、
ヒジオに対しても利用するようで狡い女だな…とか考えてた。
でもね、バイクでお出掛けしたり楽しかったけど、一緒に居るから楽しいのかとか、嫌いじゃないって確認だけで…好きかどうかって判らなかった。」
「うん…」
「結局は、肉食部の女に取られたくないって、衝動的だったけどね。いつからとか、どうしてとか、どこがとか判らないけど、いつの間にか好きだったみたい。
だから、ヒジオの思いが蔓延して、私に伝わって感染(うつ)っていたのかも…
私も、ちゃんと…ヒジオのこと好きだよ。だから、離さないで…一人にしないで…」
私が見上げると、ヒジオは真っ赤な顔をして…
目が合うと俯いた。
え…照れてるの?…まさか泣いてるの?
ヒジオの肩に手を伸ばそうとした。