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きっかけは映画館
第33章 ヒジオ来訪
「先輩、土方さんのお見送りをお願いいたします。」
茶器を片付けながら、部長の前で言われてしまい、ヒジオも私も優希ちゃんの言う通りにするしかなかった。
「ヒジオ…色々とありがとう。」
帰りもエスカレーターを使いたいとのヒジオの意向で、一緒にエスカレーターを降りる。
「麻里絵ちゃん、かしこまらなくていいんだよ。業務内のことだし、仕事でも麻里絵ちゃんと関われて嬉しいんだから…」
スーツ姿のヒジオが大型犬の顔になり、何故だかドキドキした。
勢いや成り行きでなく、この人だから好きなんだ…とか、時間中に考えるべきでないことに思いを馳せる。
「そんなに心配せずに、今の状態での資料をまとめればいいんだよ。」
優しく笑ってヒジオは出ていった。
「間宮さん、土方氏は若いのに優秀なんだね。」
部長に呼ばれて教えてもらったのだが、△△商事では、役職名の入らない名刺には、名前の部分に入っているカラーで大体のポストがわかるようになっているらしい。
ヒジオはゴールドで役職が入る一歩手前なのだと言う。
『若い人の柔軟性と機動力でフェアが開催されるのは楽しみだな。』
その言葉に、そのままミーティングルームで報告の時間を取っていただく。
奇数フロアの飲食店増設について、上層部での判断を仰がなけれはならないからだ。
『月末の部長会議に早速かけてみるよ。許可されれば、フロアの采配は元々うちの管轄なんだから、レイアウトなどの検討がすぐに必要になるぞ?』
と、快く動いてくれることになった。