
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
きっかけは映画館
第38章 きっかけは映画館

麻里絵ちゃんと裕司の数年間に負けない想いを持っている。
短くても深く濃い時間を共にしているはずだ。
そんな風に自分に言い聞かせていた。
いよいよ本編が始まる。ストーリーは頭に入っている。
付き合っている相手とそれぞれ別れた男女が出会い恋に落ちる。
デートをして、毎日連絡を取り合って、恋の始まりにお互いウキウキしていた。
年齢的に彼女彼氏が居ておかしくない二人は、互いの過去を探り合ってしまう。
気にしないと言い合って打ち明けあったのに、元彼元カノの存在が二人の恋に影を落とす。
『だったら、初恋同士しか上手くいかないってことになるよね。』
自分が言った言葉が降りかかってくる。
『相性はいいと思うよ、繋がってしまえばはっきりするけど…』
俺はそう言ったが、そして麻里絵ちゃんと体を繋げてはっきりしたけど、麻里絵ちゃんはどうだったんだろう。
思わず包むようにしていた手に力が入り、麻里絵ちゃんの手を握ってしまった。
すると、麻里絵ちゃんが傾き、俺の肩に頭を乗せてきた。
可愛い…麻里絵ちゃん、間違いなく俺は君を愛しているよ。誰にも負けないほど愛している。
発せられない想いを指に託して、麻里絵ちゃんの手の甲をくるくるとなぞった。

