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きっかけは映画館
第38章 きっかけは映画館


「麻里絵ちゃん、夕飯は外にしよう?」

「でも、惣菜や外食ばかりだったから…」

「じゃあ、明日は全部家で作ろうよ、買い物もしなきゃだし。」

「そうだね。」

麻里絵ちゃんが冷蔵庫と相談して納得する。

週末は同居同盟の約束はないが、これで明日も居てくれそうだ。

「駅前の焼き鳥やなんだけどね。店はそんなに綺麗じゃないけど、美味しい店があって…」

「うん、ヒジオのチョイスは間違いないから行こう。」

ラフな格好で出掛ける。あ〜、一緒に暮らしてる感が溢れてて最高だな。

麻里絵ちゃんの手を引いて、行きつけの赤提灯に向かった。


「あ〜、ここ、前から気になってたの。おっきな提灯下がってて、いつも美味しそうな匂いと煙が出てるから。」

「そう、焼き鳥って言ったけど、炉端焼き?何でもあるからね。確かに女の子だけじゃ入りづらいよね。」

暖簾を潜って入ると、

「お〜、久しぶりじゃねぇか、新撰組副長土方 歳三、忙しかったか?」

真ん中で捻りハチマキで柄の長い特大しゃもじのようなものに料理を乗せて、カウンター周りのお客さんに差し出すおじさんが、ヒジオに声を掛けてきた。


「おやっさん、だから俺は歳三じゃなくて久生だよ。」

ヒジオが笑いながらカウンターに腰掛け、私を隣に座らせる。


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