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きっかけは映画館
第8章 食事
ヒジオ…って、俺の呼び方、やっぱりそれに定着するのかよ〜
しかもサイトの説明なんて、、、
「お料理お持ちしました。」
ちょうど料理が運ばれてきて、魚の切腹を注文する。
店員が下がるのを待ち構えて彼女がこちらを見るので仕方なく説明した。
「俺、彼女欲しくて、出会いがないから探してて…」
「ヒジオの都合なんか聞いてないわよ。」
「あ、ああ、ごめん。
まあ、その場しのぎの出会い系とかじゃ嫌だから探してたら、『映画館へ行こう!!』ってサイト見つけて…」
「それはさっき聞いた。」
手厳しいな麻里絵ちゃん…
俺だって言いにくいのに…
「男側は5000円払って観たい映画と映画館を指定する。すると運営側がその希望に合う女性からの申し込みをマッチングさせて、並んだ席を取ってチケットを送ってくる。
後はノータッチ、映画館が出会いの場、その後は本人達で好きにどうぞって感じ。」
「なんで、あの映画を選んだの?」
「ホラーとかアクションとかジャンルがあって、ホラーなら女性がしがみついてくるとか、アクションで繋いだ手で共に汗を握るとか…
経験談が載ってて…
あの映画は大ヒット中で、それでカップルになったとか、結婚決めたとか書いてあったから…」
「はぁ、単純ね、ヒジオって…
そんな体験談作り物に決まってるじゃない。」
「え、ああ…そっかぁ…」
麻里絵ちゃんはスマホを取り出してしばらくすると画面を見せてくる。
「これ?」
「ああ…」
枝豆やポテサラをつまみながらビールを飲み、麻里絵ちゃんはまだスマホを弄っている。
「女性は2000円ですってよ?女性は格安どころかしっかり手数料取られるし、ヒジオの3000円はまるまる運営側の利益ね。マッチングするだけで、いい商売ね。」
再び画面を見せつける麻里絵ちゃんは悪事を暴いた自慢顔で、その表情も可愛かった。
「麻里絵ちゃん、ワイン飲める?ハムとチーズの盛り合わせに白飲もうよ。」
「いいわよ。」
彼女はまだ半分も空かない大ジョッキをチラリと見て返事した。