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きっかけは映画館
第8章 食事
「ぷはぁ〜、仕事終わりのビールって最高〜。」
痴漢の仕事?昼間の仕事?
「あれ、麻里絵ちゃんも仕事帰りの映画だったんじゃないの?」
「そう…ですが…」
肘男はペラペラと喋る。まあ、このシチュエーションじゃ、自分から話題振っていかなきゃだろうけど…
まるで何事もなかったかのように…
でも、映画館での事を話題にされてもイヤだし、素っ気なく返事する。
肘男が口についたビールの泡を手の甲で拭う。
程よい厚みのある唇を手で拭う仕草に男を感じた。
あの唇が、さっき私の手に触れて…舌で舐め回され…
ッは、私…何を思い出してるの…
「麻里絵ちゃん、お通し凄く美味しいよ。」
勝手にちゃん呼びも定着してしまっているし、肘男は悪びれない感じで…
何なのよ…
箸を取り南蛮漬けを口に運べば、優しいお酢の旨味と揚げた魚が確かに美味しい。
「どう?」
「美味しい…」
何だか肘男のペースに持っていかれそうで、グイッとビールを煽る。
「ヒジオ、サイトってどんなシステムだったの?」
映画館でのことをぶり返すのはイヤだったけど、どうしてこんなことに巻き込まれたのか知りたかった。