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きっかけは映画館
第39章 おフランス
「「いただきます。」」
「凄いな〜、本格中華だ。」
「うちに入ってる○○楼のだからね。」
少しくらいご飯を作ろうとか、ヒジオを喜ばせようとか…
空回りしそうな努力をする気力もなく仕事でへとへと。
「麻里絵ちゃん、また真面目に何か思い詰めているでしょう。」
「え?」
「明日の商談のこと?」
「ううん、また惣菜に頼ってばかりだなって…」
「ご飯のこと?それはもっと早く帰ってこれなきゃ無理だよ。今から作ってたら何時になっちゃうの?
麻里絵ちゃんがバランスとか考えて買ってくれるだけで充分。
1人でいた時より全然健康的だよ。」
ほら、やっぱり敵わない。
「ありがとう。私…ダメだね。」
「ん〜、麻里絵ちゃんお疲れだね。お風呂に先に入っておいで。」
ようやく食べ終わったところでヒジオに促され、半ば強引にバスルームに向かわされた。
「洗い物が終わったら俺も行くから、でものぼせちゃうから無理に待ってなくていいよ。」
至れり尽くせりの特大甘やかしだ。
「ごめんね、先に入るね。」
「謝らなくていいんだよ。さっぱりしておいで。」
促されてバスルームに向かう。
いつも一緒なのに寂しい気持ちと、1人でのんびり入れるという安心感がない交ぜになっていた。