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きっかけは映画館
第39章 おフランス
「今日は確かに逃げてたわよ。でも立花女史がいなかったら危なかったし、藤堂女史が言ってたように、身持ちが固くなかった頃のヒジオなら、迎え討って食べに行ってたんでしょう?」
やっぱりそれで不機嫌だったに決まってるよね。
優希ちゃんは慌てて晃君を引っ張り耳打ちして状況説明をしている。
あちゃー…と声がしそうな表情で晃君が頭を掻いているが、麻里絵ちゃんは全く気付いておらず、と言うより俺を睨んでいる。
「あの、麻里絵ちゃん?本当にあの人とは何にもないよ?
そりゃ、前はあの勢いのままぶつかっちゃったこともあるけど…
それだけだし…本当に…」
嫉妬されるほど好かれているのは嬉しいけど、それを顔に出したらまた誤解されてしまう。
そして、不安な麻里絵ちゃんと攻撃的な麻里絵ちゃんはどうして反比例しているのか、いや、比例しているからこうなるのか。
「間宮先輩、そんなに土方さんのことが心配なら、もう結婚して自分のものにしちゃったらいいんじゃないですか?」
自分が撒いた爆弾だからか、晃君が回収しようと発言する。
「え…結婚したら…そういう心配ってなくなるのかなぁ。」
意外にも麻里絵ちゃんが乗っかってきたけど、うかつに口を挟めない。
別に結婚してもしなくても、もう麻里絵ちゃん一筋なのには変わりはないのだけど。