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きっかけは映画館
第39章 おフランス
「ぷはぁ〜、生ビール美味しい。仕事が捗った後のビールって最高ですよね。」
例によって、常連になりつつある居酒屋での乾杯。
ヒジオの会社からヒジオも一緒に出てきたのだ。
そして晃君にも声を掛け、またダブルデートをしようとなった。
麻里絵ちゃんは明るく振る舞っているが、どことなくおかしい。
それがどうしてかも想像つくのだが、自分から説明したら言い訳がましくなると思い控えていた。
優希ちゃんも察しているのか、その話題には触れず、スイーツ部門の話ばかり振っていた。
「遅くなりました〜」
そこに晃君が到着して再び乾杯となった。
「鞄部門の交渉はどうなったの?そこも女性課長なんでしょ?
どうだった、立花女史みたい?」
何も知らない晃君が優希ちゃんから事前に聞いていたのであろうその話題に触れる。
優希ちゃんは何とも言えない表情になり、麻里絵ちゃんは俯いた。
「え…あ…」
「肉食部の女より素早い課長だった。」
「あ…あの鞄部門じゃなく…肉食部?…ですか?」
「ああ鞄は皮革を使うから、肉食部より手が早いんだ。
中身はまるっと食べられちゃう訳ね。
そういうことだよね?ヒジオ。」
「え…あの、何度も言っておりますが、麻里絵ちゃん、肉食部でなく食肉部ね。
それに、俺は食べられていません。」